兵庫県芦屋市にある、アメリカが生んだ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)がデザイン・設計を担当した、重要文化財に指定されている「ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)」を紹介します。
フランク・ロイド・ライト設計のヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)の概要と行き方
ヨドコウ迎賓館とは
ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)は、大正時代にフランク・ロイド・ライトが設計を行い、酒造家・山邑太左衛門の別邸として建築されました。
フランク・ロイド・ライトは、日本では6件の建築に携わっており、「帝国ホテル」や「自由学園」などの建築物の中で、建設当時の形を留めているのは、この「ヨドコウ迎賓館」のみと言われています。
大正13年に完成し、1974年に重要文化財として登録されています。
大正時代に建設されたRCの建物では、初の重要文化財になっており、建物自体は4階建てのRC構造。
敷地の形状上、建物も南北に細長く建てられ、階段形式で建てられています。
フランク・ロイド・ライトが特徴の大谷石や、木組みの装飾などが所々に使われ、屋上のバルコニーからは、神戸の市街地や大阪湾を見渡すことができます。
ヨドコウ迎賓館への行き方
最寄り駅は阪急芦屋川駅になり徒歩10分で到着します。
ヨドコウ迎賓館までは坂道(ライト坂)になっており、アナウンスされている時間より、時間がかかるかもしれません。
駐車場もあり、乗用車7台、バスの駐車も可能です。
ヨドコウ迎賓館
●所在地/兵庫県芦屋市山手町3-10
●開館日/水・土・日曜日・祝日 10~16時(入館は15:30まで)
●料金/大人(18歳以上)500円、小人(6歳~17歳)200円
ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)の見所と、実際に行ってみた感想
実際にヨドコウ迎賓館に観に行った時の感想と見所を紹介します。
芦屋川沿い~ライト坂
案内の通り、阪急芦屋川駅を北に向かうと、芦屋川が流れる橋の上からヨドコウ迎賓館が見えてきます。
(少し遠い💧)
橋を超え少し歩くと、左側に「ライト坂」の看板が…
フランク・ロイド・ライトとヨドコウ迎賓館を知らなければ、ピンと来ないかも…
ライト坂の看板を超えた当たりから、坂が急になります。
左側の擁壁やヨドコウ迎賓館の駐車場を見ながら坂を登っていくと、年季が入った看板と門扉が出迎えてくれます。
入口~アプローチ
門扉を超え、アプローチを進む所にトイレがあります。
(ヨドコウ迎賓館内のトイレはもちろん使えないので、ここのトイレしか使えません。)
ゆったりとしたアプローチを進むと、キャンチバルコニーと大谷石の装飾をあしらった外観が見えてきます。
車寄せ・エントランス
(車寄せとエントランス)
この車寄せからも市街地を見渡せますが、楽しみは4階のバルコニーまでお預けに。
個人的には、フランク・ロイド・ライトのシンメトリー(左右対象)のデザインも好きで、車寄せの部分も、キャンチと柱などのデザインで作られた有機的建築に魅入れられます。
車寄せ右側、玄関の横に水だんがあり、ゲストを風情で迎え入れます。
どのアングルから見ても、シンメトリー(左右対象)デザインが多いです。ベージュの色目と大谷石の雰囲気が、気持ちを落ち着かせます。
天井にも凹凸がないので、スッキリとした印象を受けます。
玄関入口で料金を払い、スリッパに履き替え中に入ります。
玄関入ると、すぐに階段が見えるので2階に上がります。
2階への階段部分は、フランク・ロイド・ライトが特徴の木組みの窓枠から光が差し込みます。
階段も大谷石が使われおり、フランク・ロイド・ライトのこだわりが感じられます。
2階・階段ホール
2階に上がるとホールがあり、フランク・ロイド・ライトのパネルがあり、実績などが紹介されています。
付き添いなどの方で、フランク・ロイド・ライトを知らない人は、一度一読されてみてはどうでしょうか?
フランク・ロイド・ライトは「有機的建築」を唱えており、近代建築の機能的で合理的な建築とは、相反する考えとして謝って理解されたりしています。
※フランク・ロイド・ライトの言う有機的建築とは、建築が周りの自然環境と調和すべきことと、機能性のみの追及で豊かな人間性は保証されないと唱えていました。
ライトの師匠のルイス・サリバンやル・コルビジェが提唱した「機能的主義」から相対立することで批判を浴びましたが、今の現代建築にも考えさせられる内容です。
2階応接室
2階階段ホール隣には応接室がり、ヨドコウ迎賓館のメインの見所の一つです。
応接室の内部も、暖炉を中心にシンメトリー(左右対象)にデザインされており、大谷石の暖炉や飾り銅板、作り付けの家具、飾り棚や置台などが配置され、見所が凝縮されています。
(作り付けの長椅子には座れません💧)
東西に大きな窓があり、周りの景色を見ることができます。
ライトの言う、有機的建築の自然との調和の一部を感じ取れます。
天井際のハイサイドライトにも、木製の建具が取り付けられ、装飾材と合わさっており、統一感があります。
隣は給湯室になっています。
ゲストを応接室へ招き入れた後、ここで準備をしていたと思われます。
2階には他に倉庫があるみたいですが、中には入れませんでした。
3階家族室~和室~3階西側廊下
3階へ上がると、南側に家族室が有り、和室へと繋がっています。
2階から3階へ上がる階段ホールの部分です。
大谷石の装飾が何とも言えません。
主要室以外の部分の手の入れ方に、こだわりを感じます。
3階の家族室には1/100の模型が飾られています。
独特の地形や、外観の全体図などを模型で見ることができます。
隣には3室続きの和室があり、今回は改修工事を行った時の内容や、方法などが紹介されていました。
元々のライトの設計段階では、和室の計画はなかったみたいです。(和室ではなかった場合の計画が気になる)
施主の強い要望から和室を作ることになり、弟子の遠藤新や南信の協力を経て実現されています。
ヨドコウ迎賓館はアメリカ式のヤード・ポンド方式で設計しており、弟子達は日本の尺貫法で設計でする場合、誤差が生じます。
その誤差も壁の厚みなどで調整されたみたいです。
フランク・ロイド・ライト作の和洋折衷と言ったところでしょうか…
和室にも、ライトの特徴がいくつも見受けられ、通常の欄間の上の飾りなどが「飾り銅板」でデザインされています。
和室西側に廊下があり、「葉」をモチーフにした飾り銅板で光と自然を取り入れています。
この廊下は個人的にすごく気に入っています。
等間隔に配置された窓に、ライトデザインの木組みの窓枠、葉の飾り銅板など、「廊下」の考え方を思い改めました。
建築内部から感じられる自然とのバランスが、言葉では言い表わすことができない美しさを感じました。
3階家族室・寝室
和室を終えると、北側は寝室・家族室があり、現在は展示室と販売所とヨドコウ迎賓館の上映室になっています。
売店では、ヨドコウ迎賓館やフランク・ロイド・ライトのグッズを購入することができます。
写真立てやパンフレットはよく見ますが、Tシャツや傘などもあるのは驚きでした。
家族寝室の方ですが、こちらには復元された机と椅子が置かれています。
家具も建築で使われている木目と同色なので統一感があります。
4階食堂~バルコニー
4階には食堂とバルコニーがあり、2階の応接室と並ぶ、ヨドコウ迎賓館の見所の一つです。(南側のバルコニーは出れますが北側のバルコニーは出れませんでした。)
この食堂室は、正方形に近い平面形成を持ち、暖炉を中心にシンメトリーにデザインされています。
特に天井が勾配上になっている上、換気の開口が三角形、そこから照明の吊り下げなど、面白い空間になっており、観る者を飽きさせません。
この食堂室はバルコニーに繋がっていて、大阪湾や神戸の市街地を見下ろすことができます。
このバルコニーもアスファルト防水で改修工事されています。
建物への荷重を軽減するために、5層あった防水層も2層に減らされ、工事中に発見されクラックも補修されているようです。
天気が良ければ、大阪湾から神戸市街地まで景色を堪能できます。
個人としては、夜の景色も見てみたいですね(開演時間が16時まで)
バルコニーから見える建物側の装飾も、最後まで魅入ることができます。
フランク・ロイド・ライト設計のヨドコウ迎賓館のまとめ
今回はヨドコウ迎賓館について記事にしてみました。
2年ほど改修工事をされていたので、その間は勿論中に入ることはできませんでした。
改修後ということで、私が行った時もたくさんの人が訪れています。
どこか古い雰囲気があったのですが、それがまた建物の空間を彩り、訪れる人を楽しませていました。
また、フランク・ロイド・ライトやヨドコウ迎賓館に興味がある方は機会を見て訪れて下さい。