先日、建築家ル・コルビュジエの特集がCasaBURUTUSで組まれていました。
国立西洋美術館が世界文化遺産登録後に出版されており、西洋美術館と同時登録された7か国17資産の建築(サヴォア邸やロンシャン礼拝堂など)の紹介や、ル・コルビュジエの弟子である、前川國男、板倉準三、吉坂隆正などの活動や作品も紹介されています。
現代のモダニズムに影響を与えているのは確かで、その範囲は建築だけに留まることなく、デザイン業界などにも影響を与えています。
近代建築の巨匠ル・コルビュジエが残した建築
出典:wikipedia
ル・コルビュジエはスイス生まれで、主にフランスで活躍した建築家。
(自身が生まれたスイスのレマン湖で、ご両親のために「小さな家」を建築、後の世界文化遺産に登録されています)
ミースファンデルローエ、フランク・ロイド・ライトと共に近代建築の三大巨匠として名を残されており、建築だけでなく、家具やデザインなどでも歴史に名を刻んでいます
特に、様々な建築に影響を与えたのが「近代建築の五原則」といわれ、その代表作が「サヴォア邸」です。
世界文化遺産登録されたル・コルビュジエの17の作品
2016年に共同で推薦され、現在も残っているル・コルビュジエが手掛けた作品が世界文化遺産に登録されました。
コルビュジエが活動していたフランスを中心に、7か国17作品が推薦され、その存在は世界中に影響を与えています。
こちらがその17作品です。
- サヴォア邸(フランス)
- ぺサックの集合住宅(フランス)
- サン・ディエの工場(フランス)
- ロンシャンの礼拝堂(フランス)
- カップ・マルタンの休暇小屋(フランス)
- ラ・トゥーレットの修道院(フランス)
- フェルミニの文化の家(フランス)
- ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸(フランス)
- ポルト・モリトーの集合受託(フランス)
- マルセイユのユニテ・ダビタシオン(フランス)
- ギエット邸(ベルギー)
- チャンディガールのキャピトル・コンプレックス(インド)
- レマン湖の小さな家(スイス)
- イムーグル・クラルテ(スイス)
- ヴァイセンホーフ・ジードルンクの住宅(ドイツ)
- クルチェット邸(アルゼンチン)
- 国立西洋美術館(日本)
私も聞いたことがない作品が何点かありました。
日本でも、国立西洋美術館が登録され注目を浴びています。
代表的な作品をいくつか紹介したいと思います。
ル・コルビュジエのサヴォア邸
「サヴォア邸」とはル・コルビュジエが設計したRC造の建物で、フランスの歴史的建築物に登録されています。
1931年に竣工し、フランスの歴史的建築物に登録されています。
80年前に設計・建築されたとは思わないようなファザード・インテリアになっており、現代でも高く評価、20世紀の建築の中の最高傑作の1つと言われています。
「住宅は住むための機械である」
ル・コルビュジエの筆書「建築をめざして」に記されているコルビュジエの名言です。
「住宅は住むための機械」言い換えれば、建築や住宅に住むための機能が必要
水に浮かぶ機能のない船は船ではない。
空を飛ぶ機能のない飛行機は飛行機でない。
それらと同様に住むことができない住宅は住宅ではないと記されています。
では「建築」とは何なのか?という疑問から入り、建築の発展や進歩の為に、コルビュジエがどう取り組んできたか?
それらを形にし、芸術と機能性を調和させたのが「サヴォア邸」とも言われています
梁を使わず、ピロティで表現することによって、解放感のある立面、平面を実現しており、近代建築の5原則が高い精度で実現されています。(屋上庭園も外から見えないよに)
ル・コルビュジエの小さな家
ご両親が使いやすいように考えられた住宅。
無駄な物は作らず、最小限の空間でまとめられています。
レマン湖や周りの自然環境とのバランスも工夫されており、現在の建築にも十分通用する要素が感じられる作品です。
ユニテ・ダビタシオン
ル・コルビュジエが設計し、1952年竣工の集合住宅です。
ベルリンやフィルミニなど世界何ヵ所に建築され、有名なのがフランス・マルセイユの「ユニテ・ダビタシオン」です。
コルビュジェが提唱した、「近代建築五原則」を取り入れた集合住宅です
1階部分はピロティで空間を演出し、外部空間との繋がりを表現しています
屋上は庭園として解放されており、元々は保育園、プールなども配置され、「集合住宅」の概念を越えた、住宅や娯楽、運動などを融合した「垂直の田園調布」とも言われています。
コルビュジェは、ただ単に集合住宅を作るのではなく、「居住者が形成するコミュニティ」という点も考慮しなければならないと提唱しています。
ダビタシオンの中にホテルが有り、現在も宿泊可能です。
宿泊しないと入れないフロアをあるらしく、建築に興味がある方は泊まりたいと思うはず。
国立西洋美術館
日本で唯一のコルビュジエ建築、東京で初めて世界遺産に登録されています。
コルビュジエ建築の中でも珍しい美術館。世界に3つだけと言われる「無限成長美術館」という形を実現させ、1959年の本館の開館とは別に、弟子の前川國男、板倉準三、吉坂隆正らによって増設されています。
自然光から照らされる美術品とのバランス、回廊型の廊下に空間を変化させるスロープ。神殿のように構え立つ独立柱など、日本の建築家にも多くの影響を与え続けている作品です。
ヴァイセンホーフ・ジードルング
「ヴァイセンホーフ・ジードルング」とは1927年にミース・ファン・デル・ローエが中心となり計画されたドイツ工作連盟主催の住宅展覧会になります。
ミース・ファン・デル・ローエだけでなく、ヴァルター・グロピウス、ヤコーブス・ヨハネス・ピーター・アウト、ハンス・シャロウン、もちろんル・コルビュジエも含め、17人の建築家が参加し、モダニズム建築の実験的住宅群としても有名です。
第2次世界大戦により一部の住宅が破壊されてしまいましたが、コルビュジエの作品は現存しています。
こちらの住宅も「近代建築の五原則」が反映され、コルビュジエの思想や主張が感じれられる作品になっています。
1927年は、ヴァイセンホーフ・ジードルングとほぼ同時期にクック邸も建築され、後の「サヴォア」邸への構想へ向け「近代建築の五原則」の進化の過程も楽しむことが出来ます。
ロンシャンの礼拝堂
戦争で破壊されてしまった礼拝堂の再建計画。
フランスのロンシャンに位置し、再建工事は1955年に竣工しています。
曲面を多用し、自由な平面・造形を表現したル・コルビュジェ後期の作品。
鉄筋コンクリートを主要材として、戦争で破壊された自然石などの瓦礫なども再利用されている。
コルビュジェの逆説的な建築技法のひとつ「重い壁を軽く見せ、軽い屋根を重く見せる」というの実現させている。
ラ・トゥーレット修道院
フランスのリヨンにある、1960年に竣工したル・コルビュジェ後期の代表作品の一つです。
ロンシャン礼拝堂のデザインを依頼をした、クチュリエ神父からの要望で、コルビュジェが指揮を執りロンシャン礼拝堂の4年後に完成させています。
ラ・トゥーレット修道院は、「近代建築の五原則」とユニテ・ダビタシオンの要素を融合された作品と言われ、現在もカンファレンスやイベントなどで使われています。
斜面にそびえ立つピロティの柱と、外部の空間に何かを主張するかのようなファザードが特徴的。
内外部ともにシンプルにまとめられ、聖堂としての美しさを建築で表現した作品になっています。
ル・コルビュジエと近代建築の五原則
80年以上前に、ル・コルビュジェにより提唱された、新建築の5つの要点です
- ピロティ
- 屋上庭園
- 自由な平面
- 水平連続窓
- 自由なファザード
この5つの要素を全て満たせている「サヴォア」邸
ル・コルビュジエが、フランスで建築した「クック邸」で初めて5原則を実現し、この「サヴォア邸」で5原則の高い完成度を表現しています。
当時は、主流であった組積造やレンガ構造に固執することなく、当時では珍しい鉄筋コンクリート造で建築する様など、後のモダニズム建築の先駆けにもようにも感じることができます。
日本の場合、敷地や法規制、構造や耐震など5原則を取り入れた建築には難しい点がありすが、その考え方やデザインの表現は取り入れたい部分ではあります。
ル・コルビュジエと近代建築五原則 まとめ
まだまだ奥が深いコルビュジエ建築。
画家としてのキャリアスタートや、家具やインテリアのデザインなど、人間としても何か魅了する不思議さがあります。
住宅設計や建築に携わりながら、これからもコルビュジエの研究を進めていきたいと思います。
建築士になりたいなら
- 一級建築士や二級建築士も、限られた日々の時間の中で合格したい方
- 効率よく、試験に出題されるところ知りたい方
- 独学は不安だが、大手資格学校の費用は負担できない方
- 試験対策をスマホで勉強したい方