今回は、古民家鑑定士の試験に向けての対策編です。
試験に出てくる用語の意味など調べました。
勉強のアウトプットの意味も込めて記事にしています。
古民家だけでなく、住宅の考え方や歴史やホームインスペクションなど、多岐に渡って勉強になりました。
一つ参考にして下さい。
伝統構法
平成に入ってからはもちろんのこと、現在、木造住宅で建てられる建築はほとんどが「在来工法」か「2×4」などになります。
古民家の特徴として「伝統構法」を施されており、建築基準法にも規定が記載されていません。
現在の建築基準法は、昭和25年に制定された木造住宅の基本は、在来工法として捉えられています。
伝統構法の特徴は以下の通りです。
- 玉石基礎
- 敷き土台
- 差し鴨居
- ピン接合や総持
- 大黒柱
古民家は外観的な特徴がありますが、上記のようなポイントで判断することもあります。
もともと伝統構法は、柱や梁などで構成された水平垂直で構造体をつくる工法です。
地震など外的な力が加わった時は、揺れて地震の力を逃がす性質があります。
今でいう「免震」や「制振」みたいな役割です。
また「総持(そうもち)」という考え方があり、本来、木材などの構造材などが、地震などの外からの力が加わった場合、復元する力を使って抵抗するという考え方です。
科学的な根拠や数値での証明ができない時代に誕生した知恵の結晶とも言えます。
現在の住宅建築の構法に大きく影響を与えています。
伝統構法と在来工法の違い
古民家鑑定士のテキストによく出てくる「伝統構法」と「在来工法」の違いをまとめてみました。
二つの方法を見比べることによってインプットしやすいと思います。
同じ住宅建築でも正反対の部分があるので興味深いです。
伝統構法 | 在来工法 | |
基礎 | 礎石、玉石基礎、ろうそく基礎 | コンクリート布基礎やべた基礎 |
仕口や継手(ジョイント部分) | めりこみなどのピン接合 | 金物での接合 |
大黒柱 | 有り | なし(あっても通し柱) |
壁 | 塗り壁などの左官 湿式工法 | サイディングなどの乾式工法 |
柱の大きさ | 120角以上 | 90角、105角 |
構造的特徴 | 足固め、敷き土台、差し鴨居 | 筋交い、火打ち |
耐震 | 免震などの柔構造 | 耐震などの剛構造 |
こうやって見比べると色々な特徴を比較することができます。
耐震の特性などでも、「在来方法」は壁で加重を支える考え方に対し、「伝統構法」は壁量に頼らない方法です。
引き継いでいく古民家
伝統構法の方が、木材などの材料の特性を生かしながら建築されています。
現在の日本の木造建築は「在来工法」で建てられるため、古民家の数が増えることは考えにくいです。
そういった美しい建築が減少していくのは、灌漑深いものがあります。
古民家などを残していくにも熟練された技術が必要です。
古民家の文化と同じく「人の技術」も伝承していかなければならない課題かもしれません。
古民家の生活スタイル
古民家や伝統構法といった建築様式では、間取りについても現代と違う点があります。
古民家の間取りの特徴としては
- 水回りは建物の北側に(玄関・土間・炊事場一体の場合などもあり)
- 厠(かわや)「*トイレのこと」は別棟に建てる。
- 湯殿「浴室のこと」は別棟に建てる。
- 玄関代わりの土間
- お客様を主役とする表座敷があり
- 廊下が少なく部屋を通っての動線(二間続き)
- 来客を通す床の間がある部屋が重要
などがあります。
時代劇などでも、当時の建て方や間取りを忠実に再現している場面もいくつか散見されます。
特に中の座敷や和室に関しては、あまりプライバシーという考えもない反面、襖や障子によって空間を広く・小さく使えたりするようなメリットがあります。
生活スタイルも、その当時の間取りが大きく影響を与えています。
現代では、昔の農村などの田の字プランから始まり、戦後には欧米の文化を取り入れ中廊下型、そこから総2階の就寝分離型が主流になっています。
古民家の種類
古民家も細かく分けるといくつかの種類に分類できます。
農家や武家、商家など、その時代の身分制度にあわせた住宅形式ともとれます。
農家住宅
田舎の方にみる茅葺きの家の大半が農家住宅、間取りは田の字型が多い。
「田」の字の形のように家の用途の使い方が四分割されています。
- ニワ(土間のこと、玄関も兼ねていることが多い)
- オモテ(お客様を迎える座敷のこと、一番良好な配置に計画される)
- ダイトコ(台所のこと。竈や囲炉裏がある)
- ナンド(収納と寝室を兼ねている空間)
また水害を防ぐために高床式になっている。
農家住宅でも、大きめの住宅は庄屋屋敷ともいわれ、武家が来るので瓦葺きが許されています。
町屋住宅(商家)
町屋(まちや)は京都などで多い、間口が狭く、奥行きがあり、一筆動線の間取りが多いパターンです。
(昔は開口の幅によって税金がかけられていたため)
道に対して屋根の軒先ラインが見える平入りの建物が多い。
仕舞屋(しもたや)や厨子二階(つしにかい)、大堀作り(だいべいつくり)などもあります。
武家屋敷
寝殿造りの寝殿を真ん中に、南側に庭、対象に対屋(たいのや)、渡殿で繋いだ形の屋敷です。
屋敷の主人は、寝殿を中心に居住生活を送るようになっています。
寝殿造り・・・平安時代に主流となっていた貴族様式の住宅。「上品さ」などが特徴で、樹木やため池など自然と調和するような仕様が多いのも特徴の一つ
渡殿・・・寝殿とその他の部屋を繋げる廊下みたいなもの
対屋・・・寝殿以外の主要な部屋
屋敷によっては位などによって住める住宅の形式が変わってきます。
大名屋敷・・・大名が仕える主人の城付近に構えた屋敷や宅地。
江戸に参勤したとき用に与えられたとも言われています。
侍屋敷・・・中下級の武士が住んだ家(お城に近づけば近づくほど身分が高いと言われている)
旗本屋敷・・・江戸幕府などに仕える旗本の屋敷(幕府の所有)
足軽屋敷・・・武士に含まれない足軽の住む住宅(長屋も多い)
左官工事と右官工事
建築工事でもよく出てくる「左官工事」です。
漆喰や土を扱う職人を左官といいます。*漢字の左官は当て字みたいです。
対義語と思われる「右官工事」は現代ではほぼ聞きません。
実は、右官=大工の事を表します。
昔の考え方では、棟梁と右官・左官で家を作るというスタイルです。
時代の変化とともに「右官」という表現がなくなっています。*棟梁が大工を兼ねるようになったりと理由は色々あります。
もちろん古民家鑑定士の試験でも出てきます。
雑学としても話が広がるかもしれません。
三和土(たたき)
三和土と書いて「たたき」と読みます。
初めて見た時は読めませんでした。
古民家などで見られる、玄関の土間のことを言います。(コンクリートと見分けが難しい)
赤土、石灰、苦塩(にがり)の3種類の材料を混ぜ合わせて作るので、「三和土」と書きます。
混ぜ合わせた三和土を叩き棒などを使って、固くなるまで10cm分は叩きます。
三和土の空間は、縁側に作り外部との繋がりや、台所周辺を三和土にして掃除を楽にしたりと、様々な場面で取り入れられています。
囲炉裏と竈
古民家の食卓の雰囲気の一つに、囲炉裏(いろり)と竈(かまど)があります。
囲炉裏の方は通常の床より、掘り下げて作られており、中には「灰」を敷き詰めて、火をつけれるようにしています。
暖房や調理などで使われていました。
自在鉤(じざいかぎ)で上から鍋を吊し、上げ下げによって加減を調節します。
古民家に設置される竈は、土や石、セメントで作られており、よく土間に置かれています。
その時代に料理で加熱する際に使われていました。(今でいうコンロなどの役割です)
真壁と大壁
古民家の場合、内壁は漆喰などの左官工事と板張りが多いので、柱が見える状態の真壁収まりが主流です。
それに対して柱を見せない方法が、大壁収まりになります。
柱に、合板や石膏ボードを張り、クロスで仕上げるので柱は見えなくなります。
新耐震基準以降の建物の大半は大壁収まりです。
両方にも一長一短あるのですが、例えば
真壁構造の場合
- 柱が見えるのでボードの厚み(12mm前後)分広い。
- 柱が見えているので、腐朽やシロアリに被害がでた場合は、根継ぎなどで対応できる。
- 壁が薄くなるので、耐震の方法や断熱材、電気配線などに影響が出る。
大壁構造の場合
- 柱に下地材を張るので、その分狭くなる。
- 柱が見えないので、解体してみないと柱の劣化状況が確認できない。
- 柱の寸法内で調整できるので、真壁構造より、耐震補強や断熱材など計画がしやすい
世間では、真壁構造は「和」、大壁構造は「洋」というイメージになっており、建築士なども上手く使い分けて提案しています。
土壁
現在は断熱材やサッシなどで、断熱性・遮音性の確保や向上に使われていますが、古民家が建てられた時代には、そういった材料がありません。
その代わりに、土壁を用いることによって、断熱性や遮音性、耐久性にまで優れた古民家を建築することができていました。
古民家などの構造の場合、壁の中に土を入れるだけでは安定性がないため、「竹小舞」を編んでからの施工になります。
竹小舞に使われる竹は「真竹」と「淡竹」が使われ、土壁に向いていると言われています。
「土」の方も当時は土と藁に水を練りこんで作られています。
藁を軟らかくしたり、そのまま使ったりして、仕様や用途に合わせて調整することも可能です。
土壁の施工方法も、荒壁塗りから上塗りまで3回から4回ほど塗りこみ完成に至ります。
書院造りと数寄屋造り
書院造りと数寄屋造りの解説です。
両方とも古民家の建築に影響を与えています。
書院造りは、室町時代から江戸時代にかけて完成した書院(今でいう書斎)を中心とした住宅様式です。
書物を読んだり、手紙を書くための場所としてこの空間が生み出されました。
書院造りの特徴としては
- 床の間
- 床柱
- 床脇(違い棚、天袋、地袋など)
- 付け書院
- 座敷
などが上げられます。
柱なども、寝殿造りの時の「丸柱」から、書院造りで「角柱」へ変化したとも言われています。
座敷などでも、高低差を作って「位」を表したり、時代がその様式を作っているとも言えます。
他にも、玄関や雨戸や縁側も書院造り外部から派生したとなっており、古民家だけでなく、和風住宅にも影響を与えています。
数寄屋造り
数寄屋造りは、「茶室」を取り入れた安土桃山時代に生まれた建築様式です。
書院造りの特徴から、格式や様式を極力排除し、茶人たちの心得などが様式に表れているとも言われています。
装飾といった床框や長押(なげし)が無くなり、化粧丸太や面皮柱などの自然の素材と、雪見障子や組子障子など職人の技量が組合わさった様式が特徴です。
千利休の桂離宮が有名で、数寄屋造りの代表作とも言えます。
桂離宮・・・庭園と建物が一体となっている約7万平方メートルの回遊式庭園。江戸初期の皇家の別荘として使われていました。
「古書院」「中書院」「新御殿」の書院に分かれており、どの書院からも庭園を堪能できるよう工夫がされています
畳のルール
現代は、洋風の家が増えており、和風や畳の文化が薄まりつつあります。
古民家や和風建築の場合は、畳はきっても切れない材になります。
日本固有の文化で、畳床(たたみどこ)と言われる板状部分の芯材の表面を、イグサなどで編み込んだ畳表で包んでいます。
装飾と畳表の止めも兼ねて、畳縁(たたみへり)を縫い付けたりします。(今は緣無し畳も多いです。)
一般的な大きさは
- 京間(本間) 畳のサイズは955mm×1910mm 近畿地方から西の西日本で使われている。
- 中京間(三六間)畳のサイズは910mm×1820mm 中京地方、北陸地方と東北地方の一部で使われている。
- 江戸間(関東間) 畳のサイズは880mm×1760mm 関東地方、東北地方の一部、北海道地方などで使われる。
- 団地間(五六間) 畳のサイズは850mm×1700mm アパートやマンション、共同住宅などで使われる。
の4種類が主流です。
畳を基準で考えるか、柱を基準で考えるかで寸法が微妙に変わります。
江戸時代を境に、畳のサイズは「柱割」が主流になってきています。
畳の敷き方も「祝儀引き」と「不祝儀敷き」があります。
- 祝儀引き・・・現在の住宅の畳の敷き方。畳の角が一ヶ所に集まらないようにする方法
- 不祝儀敷き・・・縁起の悪い時の敷き方。畳の角が十字になるように並べる方法
普段何気なく触れている「畳」にも色々ルールがあります。
もちろん古民家鑑定士のテキストにも出てきます。
住んでいる地域を中心に覚えていけば、イメージしながら覚えれると思います。
古民家の基礎
伝統構法である古民家の基礎は、基本的に石場建て工法と呼ばれる、石の上に柱を建てる形で作られます。
その基礎に使う自然石の事を礎石と言い、石の凹凸を柱をのせれるように加工することを光付けとも言います。
コンクリートがない時代に生み出された独特の工法で、基礎を作らないので通気性も良く、メンテナンス面でも見直されています。
基礎がなく、石で柱を支えている弱いイメージがありますが、古民家の伝統構法と現代の在来工法では地震に対する考え方も違います。
伝統構法は、地震の力を「変形」によって揺れて受け流す「制震」的な役割を果たすため、建物の構造材や礎石などの部材を接合させなくても問題ありません。