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老人福祉施設の種類。「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「老人介護保険施設」について紹介

老人福祉施設の解説。特別養護老人ホームの参考画像

今回は、資格試験などによく出題される老人福祉施設を解説していきます。

老人福祉施設は、似ている特徴や名称が多いため、特徴などが混同されやすい分野になります。

特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「老人介護保険施設について解説します。


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目次

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームの特徴とは?

特別養護老人ホームとは?の参考画像
特別養護老人ホームとは?

特別養護老人ホームの大きな特徴としては、常時介護を必要とし自宅で介護を受けれない高齢者(65歳以上要介護3以上(特例の要介護1・2)高齢者のための施設になります。

特別養護老人ホームは、数人で相部屋を作る「在来型」と、全て個室で形成されている「ユニット型」に分類されています。

厚生労働省の方針で、2002年(平成14年)以降に建設される特別養護老人ホームは、全て個室で10人以下で共有部分を併設したユニット型で整えられています。

プライバシーや対人ストレスなどにも考慮された内容に変更になりました。

特別養護老人ホームの設備

特別養護老人ホームの設備概要は「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」などで以下のように定められています(一部抜粋)

特別養護老人ホームの居室

特別養護老人ホームの居室の条件になります。

  • 居室の定員は1人(一部例外有り)
  • 入居者一人当たりの床面積は10.65㎡以上
  • 地階に設けない
  • 寝台又はこれに代わる設備を備える
  • 床面積の1/14以上に相当する面積を直接外気に面して開放できるようにする
  • 出入口の1つは、避難上有効な空地、廊下又は広間に直接面して設ける
  • 入居者の身の回りの備品などを保管することができる設備を備える
  • ブザーなどこれに代わる設備を設ける

特別養護老人ホームの浴室

特別養護老人ホームの浴室の条件になります。

  • 介護を必要とする者が入浴するのに適したもの(機械浴など)

特別養護老人ホームのトイレ

特別養護老人ホームのトイレの条件になります。

  • 居室のある階ごとに居室に近接して設ける
  • ブザー又はこれに代わる設備を設ける
  • 介護を必要とする者が使用するのに適したものとする

特別養護老人ホーム その他

特別養護老人ホームのその他の条件になります。

  • 廊下の幅は、基本1.8メートル以上(中廊下にあっては、2.7メートル以上)(一部例外有り)
  • 廊下、トイレその他必要な場所に常夜灯を設け、廊下及び階段には、手すりを設ける
  • 調理室などの火気使用室には不燃材を用いる

個人での空間を考慮しつつ、共用部などにも使いやさなどが求められている内容になっています。

養護老人ホーム

「養護老人ホーム」65歳以上の高齢者が対象で、経済的・精神的や住宅事情など、幅広い入所条件を対象とした施設になります。

もちろん老人福祉施設の種類に分類されるのですが、介護施設ではないので注意が必要です。

「養護老人ホーム」の特徴や設備条件についてそれぞれ見ていきます。

養護老人ホームの設備及び運営に関する基準

養護老人ホームとは?の参考画像
養護老人ホームとは?

養護老人ホームについては「養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」により下記のように定められています。

養護老人ホームは、入所者の処遇に関する計画(以下「処遇計画」という。)に基づき、社会復帰の促進及び自立のために必要な指導及び訓練その他の援助を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることを目指すものでなければならない。

出典:養護老人ホームの設備及び運営に関する基準

養護老人ホームは、20人以上の人員を入所させる規模が最下限で求められます。

設備の基準についても、「特別養護老人ホーム」や「軽費老人ホーム」に類似している部分があります。

養護老人ホームに設けなければいけない設備の種類

養護老人ホームの設備概要は「養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」などで以下のように定められています(一部抜粋)

他の老人福祉施設と同じく、建物は「耐火建築物」「準耐火建築物」(消防設備の設置などによる例外有り)に指定され、その上での設備設置基準になります。

他にも廊下の幅は1.35m以上とし、中廊下の場合は1.8m以上としなければいけません。

養護老人ホームに設けなければいけない設備(居室)の種類です。

  • 居室
  • 静養室
  • 食堂
  • 集会室
  • 浴室
  • 洗面所
  • 便所
  • 調理室
  • 医務室
  • 調理室
  • 職員室
  • 洗濯室または洗濯場
  • 宿直室
  • 汚物処理室

数種類に分かれるので、ある程度の大きさの建築ボリュームが求められます。

養護老人ホームの居室に関する設備基準

養護老人ホームの居室に関する設備基準です。

  • 入居者1人当たりの面積は1.65㎡以上
  • 地階に設けない
  • 1以上の出入口は、避難上有効な空地、廊下又は広間に直接面して設ける
  • 入所者の寝具及び身の回り品を各人別に収納することができる収納設備を設ける

養護老人ホームについては、入居者1人当たりの面積になってきます。

養護老人ホームの静養室に関する設備基準

養護老人ホームの静養室に関する設備基準です。

  • 医務室又は職員室に近接して設ける
  • 原則として1階に設け、寝台又はこれに代わる設備を備える

居室で静養することが困難な入居者のために設けるので、もしもの場合を備え上記のような条件が加味されています。

養護老人ホームの洗面所・便所に関する設備基準

養護老人ホームの洗面所・便所に関する基準です。

  • 洗面所は居室のある階に設け、便所は居室のある階ごとに男子用と女子用を別に設ける

養護老人ホームの医務室に関する設備基準

養護老人ホームの医務室に関する設備基準です。

  • 入所者を診療するために必要な医薬品及び医療機器を備えるほか、必要に応じて臨床検査設備を設ける

養護老人ホームの調理室に関する設備基準

調理室に関する設備基準です。

  • 調理室などの火気使用室には不燃材を使用。

他の老人福祉施設と共通内容も多いです。

「養護老人ホーム」は、主に地方公共団体と社会福祉法人が運営しています。

各資格試験の多く出題される項目なので、1人当たりの面積や廊下の幅など、数字で表されている部分は確実に抑えていきたいですね。

軽費老人ホーム(ケアハウス)

軽費老人ホームの特徴とは?

「軽費老人ホーム(ケアハウス)」は、居宅などで自立した生活を送る為日常の生活をサポートを受けられる施設になります。

地方自治体や社会福祉法人が運営しているので、他の老人福祉施設と比べると、比較的費用を抑えて利用することが可能になります。

ケアハウスの設備条件にも特徴があるのでそれぞれ見ていきます。

軽費老人ホーム(ケアハウス)の特徴とは?の参考画像
軽費老人ホーム(ケアハウス)の特徴とは?

軽費老人ホームについては「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」により下記のように定められています。

軽費老人ホームは、無料又は低額な料金で、身体機能の低下等により自立した日常生活を営むことについて不安があると認められる者であって、家族による援助を受けることが困難なものを入所させ、食事の提供、入浴等の準備、相談及び援助、社会生活上の便宜の供与その他の日常生活上必要な便宜を提供することにより、入所者が安心して生き生きと明るく生活できるようにすることを目指すものでなければならない。

出典:軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準

他にも、軽費老人ホームの大きな特徴としては、一般型と介護型に分かれておりそれぞ入所条件も年齢による制限が有ります。

  • 一般型・・・60歳以上(夫婦の場合はどちらか)
  • 介護型・・・65歳以上で要介護1~2の高齢者が対象

所得制限などもあり、入居条件が限定されてしまうことがあります。

ケアハウスについては、「運営基準」「設備基準」「人員基準」について規定がありますが、次の項目で「設備基準」に着目したいと思います。

軽費老人ホームに設けなければいけない設備の種類

軽費老人ホームの設備概要は「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」などで以下のように定められています(一部抜粋)

基本的に建物は耐火建築物か準耐火建築物(消防設備の設置などによる例外有り)に指定され、その上での設備設置基準になります。

ケアハウスに設けなければいけない設備(居室)の種類です。

  • 居室
  • 談話室、娯楽室又は集会室
  • 食堂
  • 浴室
  • 洗面所
  • 便所
  • 調理室
  • 面談室
  • 洗濯室または洗濯場
  • 宿直室
  • 事務室その他の運営上必要な設備

施設として最低減必要な内容ばかりなので、大きさや配置なども総合的に計画する必要が有ります。

軽費老人ホームの居室に関する設備基準

軽費老人ホームの居室に関する設備基準です。

  • 部屋の広さについては21.6㎡(洗⾯所、便所、収納設備及び簡易な調理設備を除いた⾯積の場合は14.85 ㎡以上以上)(単身)、31.5㎡以上(2人部屋)
  • 地階に設けない
  • ブザーなどこれに代わる設備を設ける

面積など、上記内容に満たせない場合などでも、10程度の数の居室や当該居室に近接して設けられる共同生活室により、構成される区画における設備の基準など緩和される内容もあります。

軽費老人ホームの浴室に関する設備基準

軽費老人ホームの浴室に関する設備基準です。

  • 老人が入浴できるように適している。必要に応じて、介護を必要とする者も入浴できるようにしている。

軽費老人ホームの調理室に関する設備基準

軽費老人ホームの調理室に関する設備基準です。

  • 調理室などの火気使用室には不燃材を使用。

どの項目も、特別養護老人ホームの時ほど厳しい設定内容ではありません。

数字的な制限は居室ぐらいになるので、それらを中心に計画する必要が有ります。


「軽費老人ホーム」の特徴が他の老人福祉施設と類似しているため、活字だけでは他の施設と混同しやすい内容になっています。

ポイントしては「費用を抑えれる」「地方公共団体や社会福祉法人による運営」などが見分けれる分岐点になるでしょう。

「介護老人保健施設」

「介護老人保健施設」は、リハビリなどの機能訓練や介護・看護が必要な要介護高齢者を対象とした施設になります。

在宅復帰を目的としており、一定期間のみの入所になるので、他の老人福祉施設とは一部違う所があります。

「介護老人保健施設」の設備条件についてそれぞれ見ていきます。

介護老人保健施設の特徴とは?

介護老人保健施設とは?の参考画像
介護老人保健施設とは?

介護老人保健施設については「介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準」により下記のように定められています。

介護老人保健施設は、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない。

出典:介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準

介護老人保健施設は公的な介護施設で「老健」とも言われています。

入居条件は65歳以上で、「要介護1以上の認定を受けていることも条件の一つになります。

病院と自宅との中間的な位置づけで、リハビリなどの機能訓練がメインになり、入所できる期間も限定されてしまいます。

短期間のため、水廻り関係は共同で使うようになっており、個室を主流とした部屋タイプが多いのも特徴の一つです。

介護老人保健施設に設けなければいけない設備の種類

介護老人保健施設の設備概要は「護老人保健施設の設備及び運営に関する基準」などで以下のように定められています(一部抜粋)

建物は「耐火建築物」「準耐火建築物」(条件あり)に指定され、その上での設備設置基準になります。

廊下の幅は1.8m以上、中廊下の場合は2.7m以上としなければいけません。

介護老人保健施設に設けなければいけない設備(居室)の種類です。

  • 療養室
  • 診察室
  • 機能訓練室
  • 談話室
  • 浴室
  • 洗面所
  • 便所
  • 食堂
  • レクリエーションルーム
  • サービスステーション
  • 洗濯室または洗濯場
  • 汚物処理室

リハビリに特化した施設になるので、療養室や機能訓練室の条件について、細かく規定されています。

介護老人保健施設の療養室に関する設備基準

介護老人保健施設の療養室に関する設備基準です。

  • 入居者1人当たりの面積は8㎡以上
  • 一つの療養室の定員は4人以下
  • 地階に設けない
  • 1以上の出入口は、避難上有効な空地、廊下又は広間に直接面して設ける
  • 入所者の寝具及び身の回り品を各人別に収納することができる収納設備を設ける
  • ナースコールを設ける

療養しやすい環境と避難について規定されています。

介護老人保健施設の機能訓練室に関する設備基準

介護老人保健施設の機能訓練室に関する設備基準です。

  • 1㎡に入所定員数を乗じて得た面積以上の面積を有し、必要な器械・器具を備える(サテライト型小規模介護老人保健施設又は医療機関併設型小規模介護老人保健施設の場合にあっては、機能訓練室は40㎡以上の面積を有し、必要な器械・器具を備える)

施設の入所定員によって比例してくる内容になります。

介護老人保健施設のレクリエーションルーム・談話室に関する設備基準

介護老人保健施設のレクリエーションルーム・談話室に関する基準です。

  • レクリエーションを行えるよう十分な広さを有し、必要な設備を備える
  • 談話室は入所者同士や入所者とその家族が談話を楽しめる広さを有する

介護老人保健施設の洗面所・便所に関する設備基準

介護老人保健施設の洗面所・便所に関する基準です。

  • 療養室のある階に設け、便所には常夜灯を設けブザーなどの設備を設ける

介護老人保健施設の浴室に関する設備基準

介護老人保健施設の浴室に関する設備基準です。

  • 身体の不自由な者が入浴するのに適したもの
  • 一般浴槽のほか、入浴に介助を必要とする者の入浴に適した特別浴槽を設ける

介護老人保健施設の食堂に関する設備基準

介護老人保健施設の食堂に関する設備基準です。

  • 20㎡に入所定員数を乗じて得た面積以上の面積を有する

機能訓練室と同様に、入所定員によって計画する必要が有ります。


老人介護保険施設の主題である「機能訓練」と「療養」との繋がりや動線など必要以上に気を配りたいところではありますね。

食堂なども入所条件などもあるので気を付けたいところです。

老人福祉施設の朱里。「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「老人介護保険施設」について紹介 まとめ

今回は、特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「老人介護保険施設について解説しました。

それぞれの居室に、条件や面積の下限値が設定されており、複合的な内容で形成させなければいけなし上、「建築基準法」や「老人福祉法」「消防法」など、多角的な知識が求められるため、一つ一つ確認しながら進めていくことになります。

利用者の方も、「老人福祉施設」と言っても多種多様分かれるので、メリット・デメリットを考慮しなければいけませんね。

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  • この記事を書いた人

archi

普段は設計メインの建築エンジニア。 休日は趣味(スポーツ・遊び)を堪能する2児の父。 ハウスメーカーやデベロッパー、設計事務所などを渡り歩き、住宅から大規模建築まで様々な分野を取り扱うストロングスタイル! 所有資格/建築士/宅建士/AFP/古民家鑑定士/福祉住環境コーディネーター/大型免許・大型二輪/一級小型船舶免許操縦士他

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